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高齢者虐待を疑われた(認定された)ら(初めにして欲しいこと)

知らされない高齢者虐待の現状

家族に関わる行政問題として、児童虐待問題と同様に相談が多いものは高齢者虐待をめぐる問題です。高齢者虐待問題について規定するものは、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(略して「高齢者虐待防止法」とよく言われるもの)です。この法律は高齢者の虐待を防止するとともに、親族など介護をする人(養護者)によって弱者たる高齢者に対する虐待問題などが引き起こされないように支援することを定めています。
高齢者虐待については、児童虐待における一時保護決定のように直接「虐待」を加害者に通知する措置はありません。そもそも虐待決定がないのです。高齢者虐待防止法では、高齢者虐待に関する通報などがされた場合は、当該高齢者の安全確認のための措置を講ずるとともに地域包括支援センターなどの連携関係者とともに今後の対応について協議するとしています(高齢者虐待防止法9条)。その後、当該高齢者への虐待を直接認定し対外的に通知するような措置はありません。先の関係者の間での協議において虐待が存在するとされた場合に、当該高齢者を保護するための措置を講ずるのです(高齢者虐待防止法9条2項)。
児童虐待においては保護者などが虐待をしているとされた場合には、一時保護決定通知が虐待をしているとされる保護者にされます。ですので、自らの児童に対する虐待に基づく措置が行われていることを保護者などの加害者は決定通知で知ることができます。しかし、高齢者虐待においては、親族などの介護者に対して「虐待とされた」ことを決定通知するような措置はありません。

では、どうやって高齢者に対する虐待が認定されたことを知ることができるのでしょうか?


(1)虐待に対する措置処分

高齢者虐待防止法は、虐待があるとされた場合に、行政関係者でその後の措置が講じられます。この措置(高齢者虐待防止法9条2項)は、老人福祉法上の老人短期入所施設への入所措置(「施設入所」、老人福祉法11条)などがあります。しかし、施設への入所決定措置は当該高齢者などに対してされ、虐待者とされる親族に対してされるのではありません。ですので、高齢者虐待を疑われ虐待ありとされた場合であっても親族などに対しては何も通知はされません。
高齢者虐待?と思ったら、この措置処分がされているかどうかを調査する必要があります。


(2)所在確認

高齢者虐待が問題となる事件では、通常、前述の入所措置及びその後の措置でどこかの老人福祉施設に入所した場合でも、どこの施設にいるかを知ることはできません。その場合、概ね住民票などによって住民登録がどこにされているかを知ることはできないことが多いです。それは、虐待の被害者等の申出により、行政(市町村長)に住民票で住民登録住所を探索するのを防止するために住民基本台帳の一部又は全部の写しの閲覧を制限することができるとされているためです(住民基本台帳事務処理要綱、「支援措置」)。

まずは住民票などの申請をして現住所を調査する必要はありますが、支援措置がされている場合は結局閲覧交付を拒否されることになります。

なお、閲覧拒否についてもできることならば、拒否されたことを資料として残すためにも書類で申請することをお勧めします。


(3)どうしたらよいのか?

このように①虐待ありとの認定が虐待者に通知されない上、②住民基本台帳法上の支援措置のため、住所等もわからないという場合にはどうしたらよいのでしょうか?このような場合には、高齢者に関する何らかの措置がされたことを調査した上で、どうして措置がされたかについての情報を市町村長(区長)に対する個人情報保護条例に基づく情報閲覧開示請求等で開示を求めることになります。開示を求めることで虐待に関する協議過程、通報などがどうされたかを知ることができるからです。そして,何らかの理由で開示をしてもらえなかったり,不十分な開示しかされない場合には,開示請求に対してなされた決定を争うことから始めざるを得ません。


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