離婚の場合の親権はどう決まるか?
未成年の子どもは、父母の共同親権に服することとされています(民法818条)。婚姻中は、父親と母親の一方に親権を行うことができないような事情がない限りは共同して行うことになります。
ですが、離婚する場合には一方を親権者としなければなりません。協議離婚については法律で規定されています(民法819条1項)。また、協議が成立しない離婚、すなわち調停離婚または裁判離婚の場合であっても、離婚届をするには親権者を決めていないと届が受理されないため、親権者が父親か母親のどちらかに決める必要があります。
父母の協議(合意)で親権者を決めることができればよいのですが、合意できない場合はどう決めることになるのでしょうか。
親権の決め方については、一概にこれという基準はありません。ただ、親権変更についての819条6項を見ると「子の利益のために必要があるとき」に変更できるとしていることから、子の利益のために父親と母親のどちらがよいかということになります。そして、子の利益の判断に際しては様々な事情を元に総合的に判断することと理解されています。その事情として一般的に理解されている事情を挙げてみると次のようになります。
Ⅰ 親の事情
①監護能力や監護意欲の程度
②親の健康状態
③精神的・経済的家庭状況(資産、収入、職業、住居、生活態度等)
④教育環境
⑤子に対する愛情の程度
⑥従来の監護状況
⑦親族等監護補助者による援助の可能性
Ⅱ 子の事情
①年齢
②性別
③きょうだい関係
④心身の発育状況
⑤従来の環境への適応程度
⑥環境の変化への適応性
⑦子の意思あるいは意向
ただし、これらの事情もあくまで参考となるものを挙げたものに過ぎず、各親子についての実情を踏まえて,総合的に判断することになります。よく離婚における相談で問題とされるものを整理すると
- 監護の継続性の基準(Ⅰ⑥、Ⅱ⑤)
現に子を養育監護している親が優先されるべきとの考え方があります。これは,親子での心理的な結びつきが重視されたものです。
- 母性優先の基準(Ⅱ④)
子どもにとっては母親の愛情が必要であるとのことから、母親が優先されるべきとの基準です。これは、特に乳幼児期の子どもについては母親の監護教育に委ねるのが子どもの利益になるという考え方からです。
ただ、これも前記のように一基準でしかなく、他の要素も含めた上で父親が親権者として指定されることもあります。
- 子どもの意思の尊重(Ⅱ⑦)
子どもの意思を踏まえて親権が決まるというものです。前記のように親権が「子の利益のための必要」を判断する以上、当然子の意思が尊重されます。
そして、15歳以上の未成年の子については、離婚訴訟などでは子の陳述を聞かなければならないとされており(人事訴訟法32条4項)、家事審判でも同様に家事事件手続法169条2項で規定されています。法律上は規定されており、実務でも10歳以上の子が関わる場合、家庭裁判所では意思確認はされているようですが、あくまで子の真意であり、無理に子に言わせたものとか親に気づかっての意見については参考とはならず、親の立場としては、あまり子どもを親権決定に関する意思確認等で振り回すべきではありません。
- きょうだい不分離(Ⅱ③)
複数の子どもがいる場合、きょうだいを分離して養育監護するのは一般的に好ましくないと理解されています。
これらの基準はあくまで参考となる要素をあげたにすぎません。一度、ご相談をされることをお勧めします。
離婚の場合の親権決定の基準 ― 夫婦関係への有責性は基準となるのか?
家族を遺棄した親、不貞を働いた親は、親権者になりにくいのでしょうか。有責である配偶者は、離婚請求は認められにくいとされていますが、親権判断にも影響するのでしょうか。前に述べた親権判断に関する基準要素として有責性というのは、要素としてはあげられていません。というのは、有責性はあくまで夫婦間の問題であり、子の親権を決定するに際しての基準となるべきではないためです。
夫婦の婚姻関係に対する有責性自体で親権を決められるべきではありませんが、ただ、子を監護する意欲(Ⅰ①)、子に対する愛情(Ⅰ⑤)、監護状況(Ⅰ⑥)といった事情で考えられることはあるかと思います。いずれにしても総合的に判断されるものですので、一つの基準に該当するというだけで決まるものではないと理解すべきでしょう。
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