私たち弁護士は、高齢者などの認知症・知的障害・精神障害などでご自分で契約などの判断するのが難しくなった場合などに家庭裁判所の選任によって成年後見人・保佐人・補助人としてその方の援助をします(法定後見)。また、能力が十分にある場合に予め契約をしておくことでの任意後見人になることもあります。
後見・保佐・補助の違いは、1人で判断することが難しいと判断された場合が「後見」、そこまでの減退はないが著しく不十分で援助さえすれば本人で出来る場合が「保佐」、保佐のレベルまで不十分ではないが、1人で判断するには不十分と言える場合が「補助」ということになります。態様の違いは本人の能力の程度の違いによります。
そして、後見人(保佐人、補助人。以下まとめて「後見人等」といいます)になるとそれぞれの態様に応じた財産管理(代理・同意・取消)をするほか、その方の身上監護もします。身上監護は、その方が生活出来るようにしていくサポートをすることになります。身上監護で特に重要なのが介護サービス関係の利用です。御親族などと同居しているような場合には、同居の御親族が一番その方の状況を御理解しておられるので何を利用するかなどについては、本人と同居の親族のご意向を受けて必要なサービスの利用をします。ただ、同居の方がいない独り暮らしの方の場合はどういう生活状況をしておられるかもわからないので、介護サービスの利用状況や担当のケアマネージャーを確認した上で何が本人にとって良いかを判断していくことになるのです。
独り暮らしの方を担当させていただく場合に一番苦労するのが、認知症などが進行してきた場合の対応です。認知症が進行すると、通常の会話は出来ているのですが、突然徘徊行為をしてしまったり、それだけでも困難なのに自分の居場所が分からなくなってしまったりすることもあります。私も担当している方が、自分がどこにいるのかわからなくなってしまい警察に保護してもらったため、警察署へお迎えに行ったこともあります。ただ、このような徘徊行為を繰り返すようになった場合の判断が一番悩みますし、辛いところです。なぜなら、本人は当然長年住んでいた住居で生活したいと思うためです。関係が深い御親族(子、きょうだいなど)がいる場合には、そのご意向を確認しながら決めていきます。そのような御親族の場合、徘徊等を繰り返したときには、その対応に追われてしまい、御親族の方が先にダウンしてしまいかねないからです。御親族の方から「施設入所させたい」というご希望があるようであれば、御親族と協力して入所先を探すことになります。そのような関係が深い(近い)親族がいない場合は後見人等としてはもっと辛い判断を迫られます。というのは、「施設入所などしたくない」とか「家で最後までいたい」というご希望を持っておられる本人の意向を無視した形で施設入所をさせざるを得ないこともあるからです。その場合、地域包括センターや担当ケアマネージャーの意見などを聞いたうえで判断することになります。
いずれにしても施設入所を検討する場合には入所先をどう選択するのでしょうか。参考までに私が判断する際には、地域包括センターやケアマネージャーのアドバイスを受けつつも以下の点を考慮します。
①利用する施設の種類
介護入所施設には様々な種類がありますが、要介護度等の入居条件を満たす必要がある施設のタイプがあります。例えば65歳以上の高齢で要介護3以上あれば、特別養護老人ホーム(いわゆる「特養」)への入所が可能ですが、入所希望の方が多いため順番待ちをしてなかなか入所できないのが実情です。その場合には、待つか、別のタイプ(介護付き有料老人ホームやグループホームなど)を探して早い入居できる方法を選択するかでの検討が必要になります。
②利用料金(入所時一括払いをしなくてはならないのか、毎月の分割払いでよいのか)
入所時にまとまった額が必要となるのは、そこまで魅力的な施設ならばよいのですが、本人の資産を大きく失うことになりかねません。よほど魅力的で本人が気に入っているとかでない限りは入所時に一括金とか前払金が必要でないような施設を探します。
③立地
ご本人の住居の近くの施設に入所出来るのが良いですが、東京都内(特に山手線内)の施設を探そうとすると入所費用だけでも高額となります。入所費用だけでなく、今後日々の生活費用がかかってきますので今後のことも考えておく必要があります。ですので、都内にこだわらず住居から離れた施設も考えます。
次に考えるのは、関係の深い(近い)御親族の居住先の近くなどで探すようにします。なぜなら本人に何かあった場合にはご協力をお願い出来るからです。
④施設での生活メニュー
本人の認知症や障害の程度にもよりますが、施設での生活メニューを確認させてもらい、施設見学をしてどのような生活をしているのかを確認します。本人は本意ではない施設生活をしていくのですからせめて楽しい生活を送ってもらいたいからです。「食事」は意外に重要な考慮点です。給食センターの様なところから配送された食事を提供する施設があれば、施設内で調理して食事を提供する施設もあります。出来れば、施設内調理してもらえる施設を選びたいなと思っています。食事は一番の楽しみでもあるからです。調理したばかりの温かい食事をしてもらいたいです。
⑤施設スタッフの様子
本人の生活の面倒を見ていただくのは施設スタッフです。ですので、施設スタッフがいきいきと活動しているか、各入居者との接し方などをやはり確認します。これも充実した生活を送ってもらうためです。
⑥本人の意向
本人が施設入所に積極的だったり、ちょっとお泊りするならばどう考えるかです。本人が何らかの形で気に入るようであれば、出来ればその施設への入所を優先的に考えたいと思います。
他にも検討する要素はありますが、重要視している例が上記の各点です。これらの要素を元にやっと入所先を確定したとしてもこれで終わるわけではありません。
どうやって本人に入所してもらうかです。本人が納得の上入所してくれるとか、自分から入りたいというような前向きな施設入所であれば良いのですが、本人は施設などに入りたくはなく、長年住み慣れた住居で生活したいと思っていることが多いのです。後見人等としては辛いところですが、何らかのお出かけの用事を作るようにして一緒に出掛けるようにもっていきます。一種の小旅行です。それでも、本人をだますかのように施設に入所させているので後見人等としては大変辛いです。選任されてから短い期間の方ならばまだしも、通常は長い期間関与させてもらっていますので信頼関係を築けたりしている場合です。入所していただいた後、施設にいてもらうことになるので、親しくなっているほど泣きたくなるくらい辛いこともあります。そのときは、「辛いけれど、ご本人のためにはこれがいいのだ」と思うようにしています。
ですので特に独り暮らしの方の身上監護は、認知症も含め障害が生じてきた場合には、後見人等はつらい思いをしながら施設入所をしていただくことも考えているのです。
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