辻本法律事務所のホームページトップ画像
児童相談所による一時保護措置について ― ご相談いただく前に ―

児童相談所による一時保護措置について ― ご相談いただく前に ―

当事務所では、行政事件を扱っていることからか、児童相談所(長)による一時保護措置についての相談がよくあります。個別事案についてはもちろん触れませんが、相談にいらっしゃる前に考えておいていただきたいことについてお話します。
一時保護措置(処分)とは、児童福祉法33条に基づくもので児童虐待に関する通報等が児童相談所にあった場合、児童相談所において調査した上で虐待対象とされている子どもの安全のために必要と認めた場合に親子を一時的な緊急分離として行うものです。通報は様々な形で行われます。警察、近隣住民、家族親族、学校、幼稚園保育園、民生委員など様々な形で家族に関わりうる人が、子どもに対する虐待状況を発見した場合に行われえます。虐待は、身体的な暴力による虐待だけではなく、精神的な虐待もありえます。精神的虐待とは、例えば、暴言を吐くとか、幼い子どもの前で父母が大喧嘩をすることなどです。また、積極的な虐待だけでなく、放置する(いわゆるネグレクト)もあります。

一時保護措置を考える上で理解していただきたいことが何点かあります。
まず、一時保護措置は、児童相談所が種々の調査をした上で短期とはいえ、親子分離をすることが子どもの今の虐待状況を避けるために必要と判断した場合にしか行われないということです。緊急時とはいえ、親子分離という家庭への強力な介入を行うわけですから、それだけの必要性がないとなされないということです。同時に必要性がなくなれば、措置も終了するのです。相談にいらっしゃる方は、「虐待などしていない」とお話になることが多いのですが、意外と気づいておられない家族の問題があったりするものです。ですので、何らかの問題が家庭関係において生じていないかを見直してみる必要もあるかもしれません。
次に一時保護は、短期的なものであり,親子分離をずっとしていくというものではないのです。児童福祉法では、2ヶ月以内とされており(児童福祉法33条3項)、必要があると認める場合にしか延長はないのです(33条4項)。この制度は、先にもお話したように一時的に分離して、問題点を解決していくことを目指すものなのです。なお、短期かつ一時的措置であるからこそ、行政訴訟を提起しても、訴訟が始まる前に一時保護自体が終わってしまう可能性が高く、訴訟を提起して争うことは現実的ではありません。
一時保護期間経過後に児童相談所(長)は、

① 訓戒・誓約をさせる
② 児童福祉司などによる指導を受けさせる
③ 里親への委託、乳児院、児童養護施設への入所
④ 家庭裁判所による審判を受ける

といったことをおこないます(児童福祉法27条1項)。親子分離が続くのは、③または④の場合なのです。そして、③の措置をとる場合、親権者の意思に反して行うことはできないとされており(4項)、親権者は措置についての同意を求められることになります。いわゆる「同意書」への署名を求められるわけです。同意などしていないとおっしゃる方もおられたりしますが、同意書に署名することは同意をしていることになりますので誤解をしないでいただきたいと思います。なお、③に同意しなければどうなるかというと家庭裁判所による承認を得て児童相談所が強制的に行うこともできます(児童福祉法28条)。ですので、一時保護中に考えなくてはいけないのは、児童相談所によって、③や④といった措置が取られそうであるかどうかをみきわめることです。①や②は家庭復帰を前提とするものですので、その後指導に従っていけばよいのです。③④を避ける必要があるのです。確かに一時保護は、親子分離を短期的になされますが、個々を争うよりは、③④による措置を受けないで、家庭復帰をしてもらえるようにすることが大事です。
一時保護期間中には、児童相談所は、親の面接等を行い、父母側に何らかの問題があれば、そのために必要な解決やアドバイスをします。そのアドバイスは、基本的には子どもの家庭復帰を目指したものなのです。ですので、面接を通じて、児童相談所が何を考えているのかを見極めていただく必要があります。児童相談所は、親子分離をしたいわけではなく、家族にとって必要なアドバイスをしてくれていると考えましょう。児童相談所は、分離ありきで同意を求めてくるとかではない限り、家族での問題点を洗い出したうえでそこを解消することによる解決を目指しているのだと考えましょう。

 私は、何の罪もない「子ども」が親の勝手な都合で虐待やネグレクトといった状況におかれることは許されないと考えています。児童虐待の問題に関しては、「子ども」を第一に考えていきたいと考えています。子どもにとって、虐待と疑われるような問題のない状況や回復できる状況であるならば家庭で育っていくのがいいに決まっています。ですので,本当に子どもにとってよい解決法を皆様と一緒に考えていきたいと思っています。


【関連業務】子ども問題 >>
【関連業務】行政事件 >>


児童虐待問題に関するご相談がとても多く、児童虐待【法律相談専門窓口】のお問い合わせフォームよりご予約をいただいてから順次対応させていただいています。
ご予約をいただいた方から担当者よりご連絡させていただきますため、お電話での対応が出来ませんのでご了承ください。

辻本法律事務所の児童虐待【法律相談専門窓口】お問い合わせはこちら

辻本法律事務所 | 〒113-0033 東京都文京区本郷1丁目25-4 ベルスクエア本郷3F   Tel: 03-6240-0070 / Fax: 03-5689-5353
Copyright © 2015 辻本法律事務所. All Rights Reserved.