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児童虐待と判断された場合の対応について

近時、よくご相談いただくようになったのが児童虐待にまつわる事件です。この事件に関しては、虐待していると判断された親(保護者、親権者)の方々からすればどのような経過があるにせよ児童と引き離されただけでもかなりの負担がある上、相談できる相手がなかなかいないというのが実情なのだと思います。
もし事実でないとしたとしても「虐待」親と疑われたり、加害者とされることは、周囲の眼があったりしてなかなか言い出せないのでしょう。そんな大変な中、誰か相談してみようと思い当事務所にご相談いただいた方々はかなり勇気をもってご相談にいらっしゃったことと思います。
そのような勇気をもって、またはご自身のお子様に対する対応を見直したうえでご相談にいらっしゃる方々には、当職の出来ること・出来ないことを説明したうえで、今後の方針としてどうされるかを一緒に考え、ご判断いただいています。ただ、決断していただくうえで共通の考えとしていただきたい点、注意いただきたい点などを説明します。

(1)段階によって異なること

「児童虐待」と一言で言われますが、それは段階によって異なります。
虐待を疑われ、児童を一時的に保護するために行われる「一時保護」(児童福祉法33条)と虐待があるとしたうえで行われる措置処分(児童福祉法28条)です。
虐待があると児童相談所において確信するとともに何らかの措置が必要であると判断した場合に行われるのが、28条の処分です。対して、まだどのような対応をするかを判断していない場合に、児童の安全を確保するために一時的に行うのが「一時保護」なのです。ですので、一時保護であるか措置処分であるかによって対応の仕方が異なってくる上、代理人(弁護士)の必要性も異なってきます。

◎措置処分の場合:処分のうち、訓戒または保護司などの指導を受ける場合(28条1項、27条1項1号または2号)の場合には、自宅に児童が帰宅できるのであまり問題にならないかもしれません。問題になるのは、児童との引き離しが継続する場合、すなわち里親・児童養護施設・乳児院等に児童を委託する場合(28条1項、27条1項3号)の場合です。
この場合には、親権者が同意しない限り、家庭裁判所の審判によって措置をすることになります(児童福祉法28条1項本文)。ですので、同意しないで家庭裁判所の審判手続となった場合には家庭裁判所という裁判所による審判手続ですので、ご自身の言い分をしっかり主張したうえで裁判所に判断してもらうためにも代理人によるサポートを受けることをおすすめします。

◎一時保護の場合:この場合、親権者の方々がすべきことは限られてきます。
具体的には、
・児童相談所による調査を真摯に受けること
・児童相談所から必要なアドバイスがあるので可能な限り、対応できるように努力すること
です。児童相談所の言いなりになるように思われがちですが、重要なのは児童相談所がまだ最終判断をしていないということです。だから保護者において、真摯な対応をすることでお子様のことを真剣に考えているという姿勢を見せるとともに必要な対応をしていく必要があるのです。

では、一時保護の場合に、弁護士としてどのようなサポートをできるのでしょうか。代理人としてご依頼いただいても保護者の方々のお気持ちを児童相談所に伝えるとともにその考えや指導内容を聞きに行くことで環境整備のお手伝いをするくらいしかありません。代理人となることで保護者の方々が直接伝えられないことを代わりに伝えることは有意義です。ただ、せっかく代理人となってもその意向を児童相談所に聞いてもらう機会があるかどうかは児童相談所の対応次第です。法的に保護者の側の意向を聞く必要があるとされているわけではないのです。ですので、弁護士費用( 着手金、報酬金)をご負担いただいてまで代理人としてご依頼いただくかどうかを当事務所では説明の上、ご判断いただいています。

(2)一時保護は、2カ月と期間が決まっていること

一時保護ですが、無制限の期間で行われるわけではありません。「一時」保護なので当然のことだと思います。児童福祉法では2カ月(33条2項)と限っており、どうしても必要な場合に引き続きできるとしているのです。
無駄に長期化されている場合で心当たりのない場合には、一時保護の継続についての「取消訴訟」を検討する場合も出てきますが、通常の一時保護の場合には、2カ月の期間のために行政訴訟を提起して争うよりは(1)で説明したように環境整備に努力をした方がよいのです。
決して一時保護処分を行政訴訟で争うことを拒否しているわけではありません。実際に「虐待」を疑われたことをどうしても納得できずに、コストがかかってでも行政訴訟をする方もいらっしゃいます。また、児童相談所の判断が遅くいつまでも一時保護の継続を余儀なくされている場合には行政訴訟を起こす必要も出てきます。
ただ、ここでよく考えていただきたいのは、ご自身のために争いたいのか、保護されてしまったお子様のために一刻も早く問題のない状況にしたいのかです。

(3)安易に「同意書」への同意をしないこと

一時保護で調査を受けている場合に絶対に注意しておきたいのが、児童養護施設・里親・乳児院等の施設への入所措置処分についての同意(児童福祉法28条1項本文)をしないことです。児童相談所からは、「同意書を書いてくれないと家庭裁判所での裁判になる」という話を聞くかもしれません。裁判所と聞いただけで驚いてしまい「同意書」に署名してしまい後で後悔する方もよくお見受けします。裁判にしないためにしてしまう「同意」が非常に重要な意味を持つことを覚えておいてください。
先の(1)で説明したように児童相談所としては、各施設への入所措置処分をするに際しては、①保護者などの同意を受けた上で行うか、②家庭裁判所の審判で行うかが必要になるのです。同意書があると児童相談所は、保護者の方の同意を元に措置ができるのです。対して、家庭裁判所の審判手続に回してもらうことができるならば、保護者の方々の言い分を家庭裁判所に聞いてもらった上で措置処分をするかどうかを判断してもらうことができるのです。自分の言い分を聞いてもらうことは、非常に重要なことです。児童相談所の判断が、施設入所になりそうになっているならば、(そうされることがやむを得ないと思っている場合は別ですが)自分の言い分を聞いてもらった上での判断をしてもらうためにも安易な「同意書」への対応は拒否し、家庭裁判所で自分の言い分、事実関係などを主張した上での判断を受けることをお勧めします。


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